1.2 集結(悠々と、ちょこ饅頭の場合)

3/5
前へ
/217ページ
次へ
しかし、 残念ながら、と言うべきか、 ありがたいことに、と言うべきか、 男のいやらしくも邪(よこしま)な企みは、見事に失敗したのだ。 もちろん男は、少女の髪を掴んだのだ。 そこまでは良かった。あとは、そのままひと気のない場所へと連れ込んでいけば良かったが、 髪を掴んだと同時に、 空から落ちてきた何かに当たって、爆発した。 男は、その謎の爆発によって、髪を掴んでいた手を離してしまい、 そのまま後ろに倒れた。 「……?」 少女は、何か違和感を感じたように、後ろを振り向く、 顔を爆発させられ、ぴくりとも動かない男の遺体が映っていた。 「…………」 でもすぐに、興味がなさそうに男から視線を外し、空を見上げる。 どんよりと、晴れる事の無い灰色の空に、青いプロペラ機のラジコンが、小鳥のようにウロウロ飛んでいた。 男を爆撃したのは、多分あのラジコンの仕業だろう。 少女はラジコンを確認してから、また歩いて行った。 少女がたどり着いたのは、先ほどより寂しい場所にある、コンクリート製の建物だ。 入り口をくぐり、階段で二階に登って、 奥にある扉(木製)に向かう。 そして、扉のドアノブをひねって、 押して開けた。 扉の向こうには、人形や模型が、沢山置かれていた。 部屋の隅には、様々な人形が寄り添うように置かれ、 棚には自動車、鉄道、動物、飛行機等の模型が置かれていた。 「お帰り」 部屋に入ってきた少女を迎えるように、 パソコンとにらめっこをしていた丸めがねの青年が、こちらを振り向き、優しく声をかけた。 少女は青年にかけより、バスケットを差し出した。 青年はそれを受け取り、中身を確認する。 壊れた小さな人形や、板の形をした機械(スマフォ)、動かなくなったロボット人形もあり、 その他は、バネやネジ等の金属部品、 この地平街において、貴重な品々が、バスケットの中にびっしりあった。 「うん。ご苦労。もう、『戻って』もいいよ」 「…………」 その言葉を聞いて、少女は人形が寄り添う部屋の隅にに向かい、同じように人形に寄り添うと、 かくん。と動かなくなった。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加