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「……よし、『飽人』、こいつらを拘束してくれ」
男が動かないことを確認し、
少女・飽人に依頼。
「はーい」
飽人は、そう軽く了承し、スケッチブックに鉛筆をしばらく動かし、すぐに止めた。
「……描いた絵を具現化させるスキル、『画霊転生(ピクチャーペイント)』」
すると、スケッチブックから、黒い蛇が飛び出し、男に這いよる。
蛇は、男に襲うような事はせずに、両手に巻きつき、ロープのように縛る。
「失礼するぞ」
気絶している男に近づき、頬に触れる。
男の頬は、お世辞にもいい肌とは言えず、脂ぎっている。
触れる時、ふぁぶれは凄く嫌な顔をしたが、それは飽人には内緒だ。
「本にするスキル、『新旧聖書(リバティブック)』」
ふぁぶれが触れた男の頬が、本のページのように、ぺらりとめくれる。
めくられた中身に、文字がびっしりと書かれていた。
「……なるほど、こいつらは人身売買の仲買人をしてるらしいぞ」
「うひゃー。それはそれは恐ろしい」
とは言うものの、飽人本人は、全く怖がる素振りを見せない。
「……で、その人身売買の本拠地が、『東京シティ』」
特に目立つように記述された項目を読み上げる。
その地名は、二人もよく知っていた。
しかし、二人とも行ったことがない。
「『東京シティ』ねぇ、かつて日本の首都だとか言われてた気がするけど」
「気がするじゃない。その通りだ。現在統治はされているが、無法者がのさばる程、規則性はぬるい」
「……以前と同じだと思うけど」
『世界破滅事件』以前でも、東京シティには法外な行いをする輩は少なく無かった。
終末を迎えたことで、更に被害が増している。
ふぁぶれと飽人は、その人身売買を行う仲買人(ブローカー)を成敗し回っていた。
「……飽人、ペン貸してくれ」
「はーい」
男の記憶と経験が書かれたページを読み終え、飽人からペンを手にするふぁぶれ。
そして、そのページに、何かを書き足した。
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