1.0 集結(ふぁぶれ、飽人、千堂シナノの場合)

3/5
前へ
/217ページ
次へ
「……よし、『飽人』、こいつらを拘束してくれ」 男が動かないことを確認し、 少女・飽人に依頼。 「はーい」 飽人は、そう軽く了承し、スケッチブックに鉛筆をしばらく動かし、すぐに止めた。 「……描いた絵を具現化させるスキル、『画霊転生(ピクチャーペイント)』」 すると、スケッチブックから、黒い蛇が飛び出し、男に這いよる。 蛇は、男に襲うような事はせずに、両手に巻きつき、ロープのように縛る。 「失礼するぞ」 気絶している男に近づき、頬に触れる。 男の頬は、お世辞にもいい肌とは言えず、脂ぎっている。 触れる時、ふぁぶれは凄く嫌な顔をしたが、それは飽人には内緒だ。 「本にするスキル、『新旧聖書(リバティブック)』」 ふぁぶれが触れた男の頬が、本のページのように、ぺらりとめくれる。 めくられた中身に、文字がびっしりと書かれていた。 「……なるほど、こいつらは人身売買の仲買人をしてるらしいぞ」 「うひゃー。それはそれは恐ろしい」 とは言うものの、飽人本人は、全く怖がる素振りを見せない。 「……で、その人身売買の本拠地が、『東京シティ』」 特に目立つように記述された項目を読み上げる。 その地名は、二人もよく知っていた。 しかし、二人とも行ったことがない。 「『東京シティ』ねぇ、かつて日本の首都だとか言われてた気がするけど」 「気がするじゃない。その通りだ。現在統治はされているが、無法者がのさばる程、規則性はぬるい」 「……以前と同じだと思うけど」 『世界破滅事件』以前でも、東京シティには法外な行いをする輩は少なく無かった。 終末を迎えたことで、更に被害が増している。 ふぁぶれと飽人は、その人身売買を行う仲買人(ブローカー)を成敗し回っていた。 「……飽人、ペン貸してくれ」 「はーい」 男の記憶と経験が書かれたページを読み終え、飽人からペンを手にするふぁぶれ。 そして、そのページに、何かを書き足した。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加