1.0 集結(ふぁぶれ、飽人、千堂シナノの場合)

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「そういえば、あの時なんて書いたの?」 駅前から離れて、路地裏を歩くふぁぶれと飽人。 その途中、飽人はふぁぶれに尋ねた。 「?あの時って?」 「ほら、さっき悪いおじさんを本にして、わたしのペン使って書いたじゃん。なに書いたの?」 「あぁ、それね。 『ふぁぶれと飽人の存在を忘れ、これから人身売買をきっぱりやめ、真面目に生きる』と書いた。正直あいつを野放しにするのは癪だけど、たまには良いかと思ってな」 素直じゃないなぁ。と飽人は微笑んで言う。 「改心させるのも悪くないと思うけどなぁ」 「犯罪者はどこまで行っても犯罪者。改心なんて、むい」 「どりゃーっ!」 言いかけたところで、突然ふぁぶれの顔に何かがぶつけられた。 缶や石ではなく、何やらめちゃくちゃ柔らかいものをぶつけられた。 よく見ると、ふぁぶれの顔を覆っていたのは、白い餅のような何かだった。 「……この」 顔を覆っている餅のようなものを引き剥がし、 恨めしそうにそれを見る。 「なにするんだ?モチ野郎」 「うっせー!姐さんの言葉を否定するなんて男の風上にもおけねーぜ!」 餅のようなものは、ぬいぐるみのような可愛い声を上げた。 この餅のようなものの正体は、『千堂シナノ』という元人間であり、 どういう経緯か、悪い魔法使いによって、喋る餅のような生き物になってしまっている。 飽人とは長い付き合いで、何かとふぁぶれとは張り合う仲である。 「お、落ち着いてよ千ちゃん。ふぁぶれくんはそういう人だから」 「いーや姐さん!こいつにゃぁ一回灸を据えなきゃ気が収まらん !こいつに姐さんの慈悲深さをわからせて」 「そぉい!」 言い切る前に、千堂を壁に叩きつけるふぁぶれ。 ぱーん!と軽い音をさせて、びよーん。と壁に伸びる千堂。 まるでスライムを叩きつけたような気分だと、ふぁぶれは思った。 「うぅ……言い切る前にオイラを壁に叩きつけるなんて……相も変わらず雑な扱いをしてくれる……」 「是非とも、そのふにゃふにゃな姿で、俺に灸を据えて貰いものだな。 お前なんてクリボーより容易いぞ」 「オイラをそこまで見くびってるの!?」 いくら餅のような生き物である千堂シナノにとっては、とてもショックであった。
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