1.0 集結(ふぁぶれ、飽人、千堂シナノの場合)

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「まぁまぁ、喧嘩は止そうよ。それに」 突然、二人と一匹の脳内に直接響くように、 黒電話のベル音が鳴る。 「っ……これは、リーダーの『精信機器(マインドコール)』か」 「正しくは、しのちゃんの『精信機器(マインドコール)』だけどね」 そんなやり取りをしていると、ベル音が鳴り止む。 『やぁみんな。久しぶりだね』 次に聞こえたのは、爽やかな青年の声だ。 「わっ、リーダー」 「この声を聞くのは久しぶりだな」 『僕は今、八雲くんの力を通して、メンバー全員に通信している。みんな久しぶりで悪いけど、 『平和主義同盟』招集命令を出す』 招集命令。それは、メンバー共通の指令の一つであり、 この命令には絶対に従わなければならない。 それは、組織全体の危機の対処であったり、敵の撃退、メンバー生存の確認を兼ねていた。 『とある都市の裏を支配する、組織の成敗だよ。最近被害が増してきてね、それに対する依頼が来た』 「で、その都市とは?」 通信を通して、ふぁぶれはリーダーの男に質問する。 『新都心・東京シティ。招集完了は三日後、連絡無しに招集出来ない場合、死亡扱いとする。 じゃあ、三日後にまた会おう』 それだけ言って、通信は切られた。 その後に流れたのは、無音と静寂だけだった。 「……ふぁぶれくん。行き先決まったね」 「まぁ、リーダーの命令が無くても、行くつもりだったけどな」 通信が来ない事を確認し、移動を開始する。 路地裏を抜けると、アメリカンバイクが置かれていて、ふぁぶれはそのバイクに跨ぐ。 その後ろに、飽人が腰掛けるように乗り、 飽人の頭の上に、千堂が乗る。 「こっから東京シティまで約一時間ちょい、ひとっ走りだな」 「いけーっ!ふぁぶれくんいっちゃえーっ!」 それを合図に、エンジンを入れると、後輪を激しく回転させ、 二人と一匹を乗せたバイクは、一気に速度を上げて走り、廃れたコンクリートジャングルに消えていった。
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