1.2 集結(悠々と、ちょこ饅頭の場合)

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東京シティ、地平街。 無法地帯であり、整備や設備は最悪、 紛争地と似たような荒れ具合で、犯罪が当たり前のように横行している。 右を見れば、天下街を隔てる壁、 左を見れば、外を隔てる壁。 最早絶望の溜まり場と言っても過言ではなかった。 しかし、長い間ここに隠れ家として潜んでいる『彼』にとっては、 最高の隠れ蓑であった。 荒廃した郊外の街並みに、周りの雰囲気とは全く、絶対に不釣合いなゴシックロリータのドレスを身に纏った少女が、バスケットを片手に歩いていた。 乞食をしている子どもや、 空っぽの酒瓶を片手に座り込んでいる男とは不釣合いに、 少女は軽やかな足取りで、郊外の街並みを歩いていた。 それはまるで、少女の居る世界が、違うかのようだった。 そんな少女の後を追いかけるように、男が歩いてくる。 目が完全に据わっていて、目線も、少女に対して鋭く向けられていた。 この男を客観的で見れば、かなり危険な人物である事は、一目瞭然であった。 「ぐ、ぐへ、ぐへへへへへ……」 男は、気味悪い笑みを浮かべ、少女に段々と近づく、 一方少女は、男の存在に全く気がついていない。 これはチャンス。 男は更に少女に近づいていく、 それでも気づかない。 男と少女の距離は、もう手の届く近さだ。 しかし男は、まだ手を出さない。 どうやって少女を捕らえるかを考えていたのだ。 その場で取り押さえるか、 あの長い髪を掴んで、ひと気のない場所へ連れ込んでやるか、 そのどちらかにするか考えていた。 だがすぐに、連れ込む事に決定した。 そうと決まれば即決行、 男は少女の、その銀色の髪を、 粗々しく掴んだ。
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