愉快な設定ミスを受け入れましょう

5/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「帰れないなら出て行って下さい、警察呼びますよ?」 画面に押し付けてもダメだということは分かった。 二人が痛がるだけでそれを続けるほど私も鬼ではない。 気持ちを落ちつけようとミルクティーを飲んでみる。 私は白いご飯にもミルクティーを並べるほどのミルクティー好きだ。 ゲームとどちらが好きと聞かれたら悩む。 誰もそんなことを聞いたりはしないだろうけど。 「それ美味しいの?ボクも飲んでみていい?」 「自分でいれなよ」 「オレの分も頼むぜ、チビ魔王」 …馴染んでない、馴染んでない。 ティータイムを邪魔されないように適当に答えたのがいけなかった。 「うわぁ、これすっごく美味しいよ?勇者さん」 「あぁ、悪くねぇな」 チビ魔王に勇者さん? どんな会話だよ、というか何者だよ。 だけどあまりに嬉しそうにミルクティーを飲む弟君に思わずほおがゆるむ。 私の周りでは甘ったるいと言われがちのミルクティーの良さが分かる奴はみんな友達だ。 「ミルクティーは初めて?」 「うん、ボク飲み物はずっとプロテイン」 聞き流す、聞き流さない、聞き流す、聞き流さない… 花弁もないのに花占い、代わりに髪でも抜こうか。 それほど難しい発言が私に襲いかかって来た。 毎朝起きたら?プロテイン! 三食のお供に?プロテイン! 三時のおやつに?プロテイン! あなたも私も?プロテイン! そんな掛け声が楽しげに脳内を駆け回る。 プロテインすぎる生活はお断りします。 夢にも出ないでね、なんか眠れなくなりそう。 「お前次期魔王のクセにヘナチョコだもんな」 「むっ、勇者さんだって外見ばかりで中身空っぽでしょ?!」 頬を膨らませて怒る弟君はやはり可愛らしい。 そうだな、ゲーム破壊とオバサン補正で殴りたいほど可愛い。 「仕方ねぇだろ、そういう設定なんだからよ」 おいやめろ、残念なイケメン殿。 その本当にゲームの世界から飛び出してきました的な発言。 私はそんなバカみたいな話を受け入れられるほど夢みてないぞ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!