43人が本棚に入れています
本棚に追加
振り向くと、田淵がいました。
棺に入っていた時の鈴木と同じく、青白い顔にげっそり痩せた頬、
落ち窪んだ眼、そして何より恐ろしかったのが、
僕を見て嬉しそうに笑っていたことです。
死人の笑顔には、見ているだけで生気を吸い取られそうな
恐怖がありました。
僕は一目散に逃げ出しました。
運動会でも出したことのないぐらいの必死さで走りました。
でも、僕を呼ぶ声はどんどん近づいてくるのです。
背中に田淵の指の先が当たり始め、
諦めかけていたその時、目の前に神社が見えました。
吉本がお守りを買った神社です。
僕は藁にもすがる気持ちで、そこへ飛び込みました。
田淵は追ってきませんでした。
そのまま神社の前を通り過ぎていったのです。
結局僕は、家族の通報で僕を捜していた警察官に発見されるまで、
賽銭箱の前に座っていました。
それからも幾度ということなく、田淵に追いかけられました。
その度に捕まりそうになりながら、
僕は何とか逃げ延びることができました。
その中で分かったことがいくつかあります。
最初のコメントを投稿しよう!