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「兄様! さっき勇鬼から聞いたけど、人間界に行けってどういう事なの!?」
玉座の間の重い扉をいとも容易く勢いも良く開き、現れたのは十代半ば位のドレスを着た少女だ。
髪は白く、太もも辺りまで伸び。
目は金を連想させる程綺麗だ。
「おい、扉はゆっくり開けろと何度言えば分かる」
「扉なんて良いの! 質問に答えて兄様!」
書類の隙間から覗くように少女を睨む魔王。
そんな魔王に臆する事もなく少女は魔王にくってかかる。
「お前ももう良い歳だろう、いい加減に結婚を考えろ、と、母さんからの伝言だ、人間界へ行って婿を探してこいだとさ」
「な、なな、なにを母様は――」
「まあ良い機会じゃないか、向こうには留学してる幼馴染みもいるんだし、人間を学んでこい」
魔王はそう言いながら山のように積まれた書類の中から、数枚を妹に渡した。
「姫乃真緒? 誰です?」
「お前の人間界での名前だよ、行き先は幼馴染みのあの子と同じ、日本にしておいた。
あの国は何かと面白いそうだし、まあ気楽に行ってこい」
「そうは言っても兄様、そんな急に――」
「御付きには勇鬼を当てる、まあ彼女に詳細は伝えてあるから、さあ行ってこい」
妹の言葉を遮り、魔王は手を翳す。
すると妹の足元に魔法陣が現れた。
「兄様待って! まだ準備もなにも!!」
「じゃあ元気でな」
魔法陣が転送を開始する。
「こ、この馬鹿兄ぃい!!」
魔王城に妹の声が木霊した。
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