好きな人

14/24
前へ
/83ページ
次へ
練習も終わって、夜の八時。 十二月の今はもう真っ暗。 しかも校内には生徒なんていないから、静かだから怖い。 「あー、寒い。素足なんてもう無理だよね」 部室の鍵を暖かい職員室に返して、校門に向かう。 スカート長くしたい。 でも、もう切っちゃったから無理。出来ない。 学校から家までは徒歩で三十分。 近いとは思うけど、徒歩でしか行けないのがキツい。 「……あれ」 校門に着くと、誰かが壁にもたれて立っていた。 恐る恐る近付くと、 「………ひ、なた?」 「遅い」 「え?」 まさかの陽向がいた。 部活が終わって一時間は経ってる。 そんな長時間、外にいたの? 鼻の頭や頬を赤くしてる陽向を見て、動揺する。 でもその反面、待っていてくれた事に嬉しく思う自分もいた。 「何で…?」 「夜に一人は危ないだろ」 陽向がそんな事を考えてくれるなんて…。 「って、荒木に言われたから」 「…………あぁ、そういう事」 人に言われたから待っててくれたのね。 期待して損したかも。 いや、それでも嬉しいけどさ。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加