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「…そっか。陽向が冬の大会に出てくれるなら、あたしは何だっていいや」
少しでも近くで陽向が見られる。
まだ、遠くには行かないでくれる。
「何だそれ」
陽向は鼻で笑う。
そうこうしてる内に、家が見えてきた。
陽向の家は、あたしの家よりも少し先にある。
「今日も送ってくれてありがとう」
「別に。通り道だから」
「今日もお疲れ様。また明日ね」
家の前で別れて、歩き始めた陽向の後ろ姿を眺める。
「…………どうしよう」
まさか、陽向がプロから勧誘されるなんて思いもしなかった。
せめて、大学からのスポーツ推薦だと思ってたのに…。
「まずい、まずい。あたしは、どうすればいい?」
ただいま。も言わずに、ドアを開けて、自分の部屋に向かう。
お母さんが何か言ってたようだけど、無視。
それ所じゃない。
ベッドに腰掛けて、制服のスカートのポケットから携帯を取り出す。
そして、履歴から名前を探してすぐに電話をかける。
プルルルル。というコール音すらも今のあたしには鬱陶しい。
早く、早く。
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