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吾郎はつくづく勝手な男だ。
自分の思い通りにならないと頭に血が上る。
そういうときの彼の思考はほとんど異常で、冷静な判断力にかける。
茜はまだそういう女にはあまりない男の暴力的な性質に興味を掻き立てられこそすれ、恐怖を感じるほどの経験はしたことがない。
吾郎はこの場を投げ出そうとしていた。
『君がそんなにわがままなタイプだとは思わなかった。俺はそういうのは嫌いだよ。』
茜は胸がちくりとする。こんなときはひとまず話題を変えて、タイミングを計って甘えるのがいい。そうすれば吾郎の機嫌はよくなる。
だが、今夜の茜は吾郎を試しに来ているのだ。自分を愛しているかどうか、それを知るまでは胸の不安は晴れない。
『先生、私たちが出会った時のこと、覚えてますか。』
茜は吾郎を信じていた。
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