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既に辺りは、暗闇に包まれていた。
関門の長たる兵装の者は、その驚きを隠せずにいた。
彼が驚くのも無理も無い。
かの公爵家は、大陸中央部におよそ800年君臨する「ゼネティア王国」の、特権階級だからだ。
「はい。私の家名は、アレントです。今はある旅程の途上、この関門に宿はあるでしょうか?」
「いえ、ここに宿はありませぬ…」
この言の後…
関門の長は、一間視線を空中に向け、ジワジワっと出てくる未知の世界を知る人物への興味に、強くそそられた。
「申し遅れた、私はダワードルジと申します。この関門の長を仰せつかっているものです。もし、宜しければ我家へご逗留下さりませぬか?」
突然の招待に、今度はアレントが驚きを隠せずにいた。
ダワードルジは、続ける。
「ダワとお呼び下さい、私は田舎の出自にて、大都市を生まれてこの方見た事が無いのです、出来れば王都、王国軍の話しやらを聞かせて頂けると、これ一生の宝…あっ、もちろん細やかではありますが夕食もご用意致しまする、わたしの故郷の…」
王国軍の新式連弩の乱れ矢よりも、矢継ぎ早の畳み掛けに、ダワのその情熱と、決して悪い人物では無い事を直感したアレントは、
では、お世話になります
と、少しの笑い声と共に答えた。
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