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「大丈夫だから落ち着いて」
涼子が直人の胸に顔をうずめる。直人はそれを受け止めるとそっと肩を抱いた。
直人にとって涼子は妹のような存在だった。昔から泣き虫でほっとけないタイプの人間だ。
一人っ子の直人にとって、それをなだめるのは、まるで兄になったかのような感覚だった。
「冗談じゃないよ!いったいなんなのよ!私は死なないわよ!ここからだしなさいよ!」
明恵が突然大声をあげた。
「ちょっと落ち着けよ」
尻餅をついている広明がなだめるが明恵は聞き入れない。
「こんな状態でどうやって落ち着くの!人が死んでるのよ!この腕輪に首輪。カウントダウンしてるし、なんで死んだかなんてすぐ分かるじゃないの!」
誰も答えなかった。誰もが分かっているだろうが誰も口にしなかった言葉。
それを明恵だけが口にした。
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