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風間友明は、ゆっくりとスライドしていくシャッターを見つめた。
まだ足が震えているのが分かる。
死体を見たのは初めてだった。
みんなに情けないと思われただろうか。
横目で様子を見る。誰も友明のことなど気にしていないようだ。
皆の真っ青な顔が見える。
無理もない。
死体を見たのだ。
常にメンバーの先頭に立って行動する直人でさえ顔色が悪い。
友明は深呼吸した。パニックになった皆をなだめることは出来ないが、降りかかる災難から守る自信はあった。
話し合いや頭を使うのは得意ではない。
得意なのは腕力を使ったもの。
腕力で物事を解決することが正しいとは思っていない。
だが現実に腕力で解決出来ることがあるのも確かだ。
昔、明恵がいじめにあっていたのを救ったのは、友明の腕力があってこそのものだった。
やがてシャッターは完全に開き、その瞬間、腕輪から電子音が響いた。
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