勇気

7/7
前へ
/92ページ
次へ
友明は明恵の肩に手を置いた。 「大丈夫だ、心配するな。俺が守ってやる」 明恵は少し笑った。 「……ありがとう」 友明は勇気を奮い立たせた。絶対に俺が守ってみせると。 ガラス戸の先の空間に目をはわせる。壁も天井も赤いタイル張り。 ただ、外の部屋のタイルの色とは微妙に違っているようだった。 錆びたように赤黒い。 「ねえ……これって……」 壁を見つめながら明恵がつぶやいた。 考えたくはなかった。勘違いかも知れない。だが、変色した壁が想像をかきたてる。 何かがこの空間で起こっていることを物語っている。一日二日で変わる色ではなかった。 これはまさしく血の色だろう。 「多分……血のあとだ…… 誰かがゴクリと生唾を飲み込んだ。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加