あの世は人手不足です

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「地獄も人が考えるほど悪いところではない…… 温泉だってあるし、針山からの眺めは最高だ。 料理だって変に赤かったり黒かったりするのに目をつぶれば、絶品なものばかりなのだが……」 男は真剣な顔で顎に手をあてて考えている。 女性はそれを見て、声を出して笑った。 「ハハハッ。 地獄は悪いところではないよな、サタン。 悪いのは人のイメージさ……」 そういって女性の顔が暗くなる。 「人は勝手にイメージをして、勝手に決めつける。 だからといって何で私がむさ苦しオヤジだと勘違いされるのだ……」 女性はなにかを思い出して、般若のような顔となった。 それを聞き、男は苦笑する。 「人のイメージには本当に苦労する…… 地獄では別に永遠に責め苦を受けるわけじゃない。 週休二日で、有給もとりやすいように努めているのだかな……」 「サタンは本当に頑張っているよ…… お前の父親の殺伐としたころの地獄とは大違いだ。 三途の川の色がそれを証明しているさ」 そういって女性は扉の奥にある三途の川を差した。 黒の扉側も、白の扉側もどちらの川も澄みわたっている。 「そうか……なら……よかったよ」 男は爽やかに笑った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加