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「地獄も人が考えるほど悪いところではない……
温泉だってあるし、針山からの眺めは最高だ。
料理だって変に赤かったり黒かったりするのに目をつぶれば、絶品なものばかりなのだが……」
男は真剣な顔で顎に手をあてて考えている。
女性はそれを見て、声を出して笑った。
「ハハハッ。
地獄は悪いところではないよな、サタン。
悪いのは人のイメージさ……」
そういって女性の顔が暗くなる。
「人は勝手にイメージをして、勝手に決めつける。
だからといって何で私がむさ苦しオヤジだと勘違いされるのだ……」
女性はなにかを思い出して、般若のような顔となった。
それを聞き、男は苦笑する。
「人のイメージには本当に苦労する……
地獄では別に永遠に責め苦を受けるわけじゃない。
週休二日で、有給もとりやすいように努めているのだかな……」
「サタンは本当に頑張っているよ……
お前の父親の殺伐としたころの地獄とは大違いだ。
三途の川の色がそれを証明しているさ」
そういって女性は扉の奥にある三途の川を差した。
黒の扉側も、白の扉側もどちらの川も澄みわたっている。
「そうか……なら……よかったよ」
男は爽やかに笑った。
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