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「俺の今の言葉……覚えておいてくれよ」
男はそういってゆっくり黒の扉の方へ歩いていく。
女性は少し迷ったようなそぶりを見せたあと、男を追いかけて呼んだ。
「サタン!」
「ん?どうし─────」
男の言葉が途中で止まった。
その唇には、女性の柔らかくほんのりとした唇が当てられていた。
二人は抱き合う。
二人の体感時間ではとても長く、甘い時間が過ぎていった。
しばらくして甘いキスが終わり、二人は名残惜しそうに離れた。
そしてまた、男はゆっくりと黒の扉を越えて、三途の川を飛び越えていった。
女性はその背を見ながら呟く。
「これは私の君への呪いだよ……
私の事を、ずっと好きでいてくれるようにね……」
男も歩きながら呟いた。
「閻魔……ありがとう……」
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