序章 闇から這い上がった鬼

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――だから嫌だったのだ。 闇が支配する学校に少女が身を埋めるようにして、教室の一角にたたずんでいた。 元々気が弱かったこの少女は、クラスの中心の少女に誘われたのを断ることが出来なかった。 ある“遊び”をしようという誘いを。 夜の学校での“鬼ごっこ”を。 その少女の話によると、最近学校内で流行っているらしかったが、正直、全く興味が無かった。 流行と言っても、あるひとつの高校の話。元から流行に敏感ではなかった少女にはどうでもよかった。 ただ、仲間から外されるのが嫌だった。 臆病さ故のこの結末。 自業自得というものだ。 ましてや、夜の校舎を一人で逃げることなど出来るはずが無い。 だから、こうしてうずくまっていた。 始めてからどれ程時間が過ぎただろうか。 暗くて教室の時計は見えない。携帯は家に忘れて来てしまった。 親には友達の家に行く、と言っておいたので時間を気にする必要は無かったが、時間が判らないというのは、やはり恐怖感を煽る。 教室には廊下の非常口の緑がかった、不気味な光が差すだけだ。 確か五人で始めたはずなので、そろそろ逃げる足音や、話し声が聞こえてきてもいい頃だ。
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