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―――
一人の者がそこにいた。
『上大沢』の表札を構える家のとある部屋。
ここは過去、とある青年が生活していた部屋。
誰も使用してはいないが、青年の妹が毎日の様に掃除をしているので今でも埃一つ無い綺麗なままだ。
「……これか」
その者が青年の使用していたパソコンの前に立つ。
そして持っていた携帯に目を向ける。
この携帯はこの者の携帯では無い。この部屋の青年が使っていた携帯である。
その送信フォルダの最後に送られたメール――いや、正確には送る事の出来なかったメール。
送ろうとした日時は騒動の最中。
電波の影響なのか送る事が出来なかった様だ。
そのメールを再度確認。
『尾崎君へ。君にこんなメールを送る自分を許して欲しい。今回は……頼み事があって送らせて貰った。
多分俺は死ぬ。コレは決まりきった事でさ……運命って言う奴なんだろうな。……個人的にはそう言うの好きじゃないんだが――
いや、何が言いたいかをハッキリと言わせて貰うわ。
時間がある時で良い。俺のパソコンを起動してくれ。パスワードは俺の誕生日だから分かると思う。
俺の誕生日知ってるよね?知らなかったら雫に聞いてくれ。
アイツは俺の知らないホクロの数まで知ってる様な奴だから。
そして、小説のフォルダがあるから見て欲しい。
そこに書いてあるのはアカウントとパスワード。
ここで察したかも知れないけど、コレは俺が小説を書いているサイトにログイン出来るパス。
君の気分が乗ったらで良い。
俺の小説を……君に書いて欲しい。頼むな』
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