第二話 誘う輪

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ある日、いつものようにバイトを終えて帰宅すると、 天井から何かがぶら下がっていた。 電気を点け、それが何かを確かめた。 すぐに分かった。 先端が丸く結わえられた麻縄。 ドラマなどでよく見る、首吊りの輪であった。                                          最初はびっくりしたし、不気味に思った。 こんなものを作った覚えはない。 誰かが勝手に私の部屋に入り、これを付けていったのか。 気味の悪いイタズラだが、こんなことをされる心当たりはない。 少々腹は立ったが、特に実害があるわけでもないので、 無理にもぎ取ろうとは思わなかった。 しばらく仰向けになってそれを眺めながら、 いろいろ考えていた。 その内、風でふらふらと揺れながらボロ天井に ぶら下がっている輪に対して、親近感のようなものが沸いてきた。 ひょっとするとこれは、神の思し召しというやつかもしれない。 憐れな境遇の私に対し、与えるべきものを与えてくれたのだ。 つまり、この縄で死ね、ということか。
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