第三話 夜空のトランペット

5/7
前へ
/18ページ
次へ
久しぶりその音に最初は不快感を覚えたのですが、 聞いている内に背筋が寒くなってきました。 そのトランペットが奏でているのは、『夜空のトランぺット』 しかも、その吹き方のクセ、息継ぎの間合いは、 まぎれもない僕のものだったのです。 窓を開けて、外を見渡しても、誰もいません。 ただただ、トランペットの音色だけが聞こえてきました。 突然、一階の電話が鳴りました。 同時に、トランペットの音色もピタリと止んだのです。 戸惑いながらも一階に降り、電話に出ると、病院からでした。 父親が勤務先で倒れ、危篤状態だと言うのです。 慌てて病院に駆けつけると、父は既に亡くなっていました。 心臓発作だったそうです。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加