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僕が幼稚園の頃。
近所にリコちゃんという娘がいた。
元気のいい娘だったけど、父親はいなかった。
大人も子供も、僕も皆リコちゃんと呼んでいたので
本当の名前は知らない。
僕はリコちゃんと仲が良く、いつも一緒に遊んでいた。
ある大雨の日。
その日は僕の親もリコちゃんの母親も、
急用で迎えに来るのが遅くなると聞かされた。
外が暗くなり、他の子供は皆お迎えが来て、
おゆうぎ室にいる子供は僕とリコちゃんの二人だけになった。
僕とリコちゃんは先生とカルタをしていた。
途中、先生が職員室の方に行ってしまった。
先生を待ったが、なかなか来ない。
雨音がどんどん強くなる。
「先生遅いなあ、よびにいこう」
そう言って、リコちゃんが僕の袖を引っ張った。
僕も先生を呼びに行きたかったけれど、真っ暗で雨が降ってる外
に出るのが怖くて、立ち上がれなかった。
「もうええわ」
リコちゃんは袖から手を放して、
部屋の出入り口へと走っていった。
リコちゃんの小さな手が引き戸に触れた瞬間、
外側から、戸が開かれた。
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