第一話 雨の日のお迎え

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僕が幼稚園の頃。 近所にリコちゃんという娘がいた。 元気のいい娘だったけど、父親はいなかった。 大人も子供も、僕も皆リコちゃんと呼んでいたので 本当の名前は知らない。 僕はリコちゃんと仲が良く、いつも一緒に遊んでいた。 ある大雨の日。 その日は僕の親もリコちゃんの母親も、 急用で迎えに来るのが遅くなると聞かされた。 外が暗くなり、他の子供は皆お迎えが来て、 おゆうぎ室にいる子供は僕とリコちゃんの二人だけになった。 僕とリコちゃんは先生とカルタをしていた。 途中、先生が職員室の方に行ってしまった。 先生を待ったが、なかなか来ない。 雨音がどんどん強くなる。 「先生遅いなあ、よびにいこう」 そう言って、リコちゃんが僕の袖を引っ張った。 僕も先生を呼びに行きたかったけれど、真っ暗で雨が降ってる外 に出るのが怖くて、立ち上がれなかった。 「もうええわ」 リコちゃんは袖から手を放して、 部屋の出入り口へと走っていった。 リコちゃんの小さな手が引き戸に触れた瞬間、 外側から、戸が開かれた。
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