第一話 雨の日のお迎え

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外には、リコちゃんのお母さんが立っていた。 いつもと同じ、優しい笑顔。 「リコちゃん。迎えにきたで」 嬉しそうに、リコちゃんはお母さんの手を繋いだ。 リコちゃんがこっちを向いて、手を振った。 「じゃあ、また明日な」 またね、と僕も手を振った。 お母さんと一緒にリコちゃんは出て行った。 少しして、変だなと思った。 リコちゃんのお母さんは傘も持っていなかったのに、 服が少しも濡れてなかった。 外は雨のはずなのに……。 そんなことを考えていると、先生が慌てて部屋に入ってきた。 「リコちゃんは? リコちゃんどこいったん?」 先生は、全く落ち着きがなかった。 お母さんが迎えに来たで、と僕が言うと、先生は驚いた。 「ウソよ」 「ウソちゃうで。今さっき来たもん」 「そんなん……リコちゃんのお母さん、今、病院で 亡くなりはってんで!」
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