6人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「おはよう!」
僕は高らかに手を挙げて、教室に足を踏み入れた。
「朝から元気だな…」
僕の級友は、横目でこちらを見ると人を小馬鹿にしたように呟いた。
おまえの愛想が悪いんだと思うぜ? という言葉は声にするのも馬鹿らしいほど、飲み込んできた。
溜め息すらも飲み込んで、僕は彼の隣に座った。
前の席の女子は、今日も早くから学校に来ていたらしく、一ヶ月後の試験に向けて勉強していた。おそらく彼女が学校に着いたとき、僕は目を覚ました頃であろう。
「いやぁ、僕も勉強しないと不味いかなぁ」
少しオーバーに声を掛けてみると、大丈夫でしょ、と言って小さく笑った。
あまり垢抜けてはいないけれど、彼女はまあ可愛い方だと思う。
ふと教室を見渡してみる。君の姿も鞄もない。
いつものことだ。大学の講義なんてこんなものである。
そして始業ベルが鳴る。
今日もまただるい一日が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!