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「聞いて聞いて! ついに運転免許取ったんだよ!」
休み時間、僕はガッツポーズを取りながら昨日取得した免許について盛大に話を始めた。
「ああ、そう。おまえみたいな変人に運転とか危ねえから路上走って欲しくないけどな」
いつも共に講義を受けている僕の級友は、こちらには目もくれずに投げやりに答えた。
想定の範囲内ではあるが、普通ここまで言うものか?
「へぇー。検定ってやっぱり難しい? オレ今度免許取ろうと思ってるんだよねー」
後ろの席の男友達が、ひょいと身を乗り出して尋ねる。
「うーん、僕はいろいろとギリギリだったけど、たぶん大丈夫なんじゃないかな?」
「そうだよ、普通は試験落とすとかあり得ないから。こいつがおかしいだけ」
僕が彼と話していると、あいつは笑いながら追撃ミサイルを撃ち込んできた。
正直運転試験落ちる人は珍しくないと思うのだが。
「そういうもんなの?」
「まあそうかもしれないね」
とりあえず時期は選んだ方がいい、と告げると彼はありがとうと言って、他の話題へと移っていった。
一息ついて教室を眺めると、向こうから"君"が歩いてくるのが見えた。他の女の子と一緒に歩いている。
喉がきゅう、と締まるのを感じた。
「……おはよう!」
なんとか声を絞りだす。だけどその後の言葉は出てこない。
「おはよー」
君は一瞬手をひらひらさせ、僕の横を通り過ぎていった。
君が遠のくと同時に、何とも言えない孤独感に襲われた。
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