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手助け×二人の絆
【そのころの紅葉】
「鳥海殿。茶でも飲んでゆっくりしてくれ。あと、鶏の唐揚げを作ったのだが……共食いの件は大丈夫だろうか?」
「相変わらず紅葉さんはユーモアがありますね。それにしても、獅子峰さんの家は窮屈です」
鳥海殿が茶を濁す言葉を返してきた。
うむ、相変わらずの減らず口だ。
「まあ、よい。とりあえず、二人で月を見ながら鶏肉を食べよう。某は兄と姉がいなくて寂しいのだ」
吾輩は普通に喋る時に限り、某という一人称を使う。
そろそろ、一人称をわたしと変えてもいいと思うが、それはそれで味気がないのでどうすべきか思案中だ。
ベランダで唐揚げを食べながら月を見ると、家族が恋しくなった。
ホームシックならぬファミリーシックか。いや、これは吾輩の造語なのだが。
「命拾いしたじゃないですか。もしも、参加してたら大変なことになりますよ。なんせ、あそこには獅子峰さんがいるのですから」
兄上が大浴場を覗いて欲情するという下品なイベントか。
最近、兄はやたらと吾輩の身体を見たがる。
風呂から出て、そのまま冷蔵庫までコーヒー牛乳を取りに行くので、裸体ならばいつでも見られるではないかと思うのだが……男心は深い闇のようだ。
そういえば、姉上よりも発育がいいと褒められたな。
喜助殿は発育がいいほうが好きなのだろうか?
と、そんなことを考えながら吾輩は手元のコーヒー牛乳をそっと握った。
「紅葉さん。まろやかな人が好きなんですね?」
「……!! そにゃことないっ!」
「紅葉さんは喜助先輩が好きなんですね?」
「そそそ……そんにゃことないもんっ!」
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