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有江の方へと行こうと思ったが、山頂あたりでやかましい声が聞こえたので行先を変えることにした。
チーム肉食系男子の気迫に満ちた声が木々を揺らしているので、俺の興味がこちらに向いてしまうのも仕方がないだろう。
なにより、獅子峰は危ないことを平気でやってのけるのだ。
まずは、あちらから観察しておかないと死人が出たら困るではないか。
「おいコラア! 火薬なんか使ってんじゃねえぞクズ! 男が頼っていい文明の利器なんざ女子とメールする時に使うケータイぐらいだろうが!」
「すいません獅子峰さん! 俺……間違ってました! 素手で野鳥を狩ります!」
せめて投石ぐらいはしてもいいのではなかろうか?
鼓膜を叩きつけるような叫びに心でコメントする。
しかも奴らは山道ではなく茂みの中で乱戦を繰り広げているらしい。
まったくもって身体の丈夫な連中である。
「獅子峰さんニホンザルです! 可愛いですよね! 食べられますか!?」
「俺さんはニホンザルじゃねえ!」
頓珍漢な返答をする生徒会会計代理。
読解力のある奴ならば、どう考えてもニホンザルを食べるかどうかについて聞いているものだと解釈するだろう。
「す、すみません! 間違えました! デカい猿と思ったら獅子峰さんでした」
「ったく。鈍器で殴打するんじゃねえよ。俺さんじゃなきゃ大怪我だぞ?」
……こいつらの頭は木綿豆腐でできているのか?
獅子峰は体格からしてニホンザルには見えないだろう。
さて、声が聞こえるばかりで獅子峰たちの姿が全然見える気配がない。
早く皆に警告をしておかないと大怪我をされると困る。
ここは熊は出ないけれど猪は出没するのだ。
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