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騒がしい子供達が寝付くと、私の静かな夜が幕を開ける。
平日は毎日、この時間が待ち遠しくて堪らない。
今日もようやく訪れた穏やかな時に、温かい淹れたてのコーヒーを片手にテレビを付ける。ボーっと見入っていると、不意に取り込み忘れた洗濯物の事を思い出した。
「あのジーンズ、もう流石に乾いているよね。」
誰も居ないリビングで、ポツリと呟きながらベランダへと向かう。
ベランダのドアを開けると、真っ暗な空に、妖しく光る満月が目に入る。何故かいつもより随分大きくて、色も赤に限りなく近いオレンジ色だ。
まるで闇夜に浮かぶ太陽のようだ。そう、満月という言葉がちょっと不適切に感じるぐらい・・・。
その妖艶な姿にしばし目が釘付けになる。
こんなに明るかったら、ネオンにも負けないね・・・。サンダルを履きながらベランダにでて、そう思う。
そしてその妖しい満月の色は、自然にあの人と初デート行った時に無理して飲んだサイドカーというカクテルを思い出させる。
「苦かったよね、確か・・・。」
あれ以来一度も飲んでいないから、味をはっきりと思い出せない。ただ口から火を噴きそうになった記憶が残るだけだ。
そんなことを考えてたら、今日のお昼を一緒に食べた時にママ友とした会話を思い出した。
ママ友同士の会話は、女子高生のそれと余り変わらない。
当然子供の話や夫の話が出ることもあるけれど、何か学校行事とかが無い限りは、話題の中心はドラマとかのテレビ番組や、洋服やネイルなどのファッションだ。
「あの男、いつまでも・・・なんだっけ主役の女の人の名前・・・とにかくあの人に付きまとってうざいよね。」
「でもあの俳優さんだったら許せる。っていうかちょっと羨ましいぐらい。」
「うーん、私は格好よくても流石にだめ。ストーカーっぽいじゃん。もういい加減諦めろって思う。」
「結構はっきり言ってるのに、なんでああも良いように解釈しちゃうのか分からないよね。。。病的?病気?」
私は見ていないドラマだったから、完全に聞き役だ。
「女々しいよね・・・。」
どうやらどんなにイケメンの俳優さんでも、悪役はやっぱりみんなに受け入れてもらえないらしい。
どれほど女々しいのか、今度見てみようっかな・・・なんて興味が湧く。
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