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新卒で入社した会社で、私は経理1課に配属された。
40台後半の山田課長と、二期上で年も二つ上の沢口さんと真鍋さん以外の6人は皆女性という課だった。
同僚の先輩達は皆日々忙しさに追われ、特別親切という印象はなかったが、聞けばきちんと教えてくれる人ばかりだった。
でも常に、「今忙しいから訊かないで」オーラが出ているように感じていた。だからなるべく迷惑をかけないように必要最低限のことしか訊かないようにしていた。
仕事以外のことでも気軽に話しかけてくれる沢口さん以外には、人見知りのせいか、半年程経ってもまだ馴染めずにいた。
同じ事業所に配属された同期入社の6人の女子達とは、早々に馴染んで、いつもランチをみんなでわいわい食べてたけど・・・。
そんなある秋の日、
真鍋さんが経理3課に異動になり、代わりに本社から芹沢係長が配属された。
第一印象は、ちびで色白でやせっぽっち。
まだ少年のようで、10歳も年上にはとても見えなかった。
彼は就業時間中にも関わらず、大きな声で楽しそうに仕事に関係ないことをいろいろ話していた。
そして大体最後には、飲みに行こうと相手を誘う。全く悪びれる様子がないことに、新人の私はびっくりしてしまった。
「うん、うん、わかる~。」
「でしょ、でしょ。」
なぜか電話では話し方がオネエ言葉っぽい。
仕事をしてても、声が大きいし、真後ろだから嫌でも耳に入ってくる。
私の前に座っている女性の先輩も、それまでは真顔でとりつくしまもない感じだったのに、彼の話が耳に入ったのか、時々笑いをこらえている。
あの人が来てから、間違いなく、課の雰囲気が変わった。
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