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「・・・ない。」 元に戻りたいと言う気持ちは手に取るようにわかる。 私以上に分かる人はこの世にいないんじゃないかと思う程だ。 「その別れたくないって気持ちを伝えた?」 「・・・あの時は・・・余りにもショックで・・・。」 途切れ途切れに答える真由美は、まだ泣きやみそうもない。無理もない。 「私なら、取り合えず別れたくないことを伝える。それでも駄目なら、少し待つかも・・・。でも私、真由美の彼の事、そこまで詳しく知らないし。うーん、例え知ってても、どうしたらいいかは正直わからないかも・・・。ごめんね、全然役に立たなくて。」 大体私は彼女にアドバイスなんて出来る立場じゃない。一度別れた係長とあれ程また恋人になれることを願ったのに、その望みは叶えられなったんだから。 「ううん、そんなこと無い。聞いてもらえて少し楽になったし。」 私は続ける。 「でもね・・・、私、心底真由美には元に戻って欲しいって思ってる。自分のことになっちゃうけど、私、本当に前の彼氏・・・、芹沢係長と本当にもう一度付き合いたかったんだ。でね、私、いろいろ頑張ったんだ、私なりに・・・。でも残念ながら無理だったの。だからって勝手なんだけど、代わりにというのも変だけど、真由美の願いは叶って欲しいと思う。真由美達のが付き合いは長いし、特に喧嘩したわけでもなくて、何か思いつくことがないなら、真由美の気持ちを伝えればどうにかなるかも知れない。本当にどうにかなって欲しいって思う。」 「うん。そうだね・・・。」 泣いたお陰か少しだけ落ち着きを取り戻した真由美と、もう少しだけ話して電話を切った。 苦しかった自分の過去と真由美が重なる。 お願いだから、何かの間違いであって欲しい。元に戻って欲しい。 きっと真由美と同じぐらい、そう心から願った。 それと同時に、私をあの谷底から救い上げてくれた暖に感謝せずにはいられなかった。
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