満月の夜

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女々しいという言葉は、未練がましい男性に使われて、その意味で女性へ使うことはきっと無いだろう。そう、いつまでもあの人の事を考える私を誰も女々しいとは形容しない。まあそれ以前に、その事実を親友の真奈美以外誰も知らないけど・・・。 私は女々しい女かもしれない。でもそんな自分でもちゃんと受け入れている。それに読み方を変えれば、「おんなおんな(ら)しい」になると思うと満更悪い気もしない。 それから話題は来世占いに移っていった。 私は占いに全く興味が無い。暇つぶしに見ることも余り無い。だからまたしても聞き役だ。 「ネットで診断できる来世占いもうやった?それによると私は画家らしい。」 「やった!やった!面白いよね!!私はなんと女優だったよ。」 「女優か・・・、有名人じゃん。いいなぁ。」 「みどりさんはやった?」 「うーん、やってない。」 「面白いからやってみて!」 「うん。わかった。」 多分みんなも特に信じてるとかではなく、ただ話題に乗っているだけなんだろう。 「ねぇ、もし生まれ変われるとしたら、何になりたい?もう一度今の旦那と結婚したい?」 ある一人のママ友がみんなにそう訊いた。 「えー、ヤダよ。美女に生まれて、もっといい男を捕まえる!」 本音とも冗談ともとれる別のママの回答に、みんなから笑いがおきる。 「私はアナウンサーになりたいな。夢だったから・・・。」 「私は絶対フライトアテンダント!!英語頑張っておけばよかったよぉ。」 「私はアメリカ人。英語ペラペラで、パッチリ二重、色白で可愛くて、ボッキュッボンの体系になりたい。」 「芸能人だけだよ、そんなの!そりゃ英語は喋れるけど、一般人は肥満でやばい人のが多いよ。」 「確かに・・・。」 憧れてた夢。特にこれと言ってないなぁ・・・。みんな口々にする夢を羨ましく聞いている私。 「今日、みどりさん大人しいね。どうしたの?みどりさんは何になりたい?」 「うーん・・・、敢えて言うなら、犬かな?」 「犬!?なんで?」 「人間じゃないの!?」 みんなが一斉に私の方を向く。 「可愛いし、尻尾振ってればえさ貰えるし。」 なんとなく理由を訊かれるとは思ってなくて、その場で思いついた適当な答えを口にする。 「野良犬かもよー?」 「それは嫌っ。」 即答する私に、みんなが笑った。
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