出会い

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まだ寒い、ある金曜日。 私は月初でもないのに珍しく残業をしていた。 その日、女性の先輩達と沢口さんはいつも通り6時から7時頃に次々と退社して行った。 山田課長なんて、4時頃からそわそわしだし、きっかり5時に満面の笑みを浮かべて「今日は飲み会なんだ。悪いけど、お先に。」と一番に帰って行った。 ありえない。まあ居ても居なくても特に変わらないぐらい頼りないから、どっちでもいいけど・・・。 時計は8時を回った。残業中はほとんど電話が鳴らず集中してできる半面、ついパソコンにずっとかじりついて画面を見っ放しになる為、さすがに目がしょぼしょぼしてきた。ずっと同じ姿勢だったのもあり、常に凝っているとはいえ肩こりも我慢できないぐらい酷い。 ああ、今日はもうこれで限界。 あとは週明けでいいや・・・。 帰り支度を始めようとした時、後ろの席で残業をしていた芹沢係長が声をかけてきた。 「俺、そろそろ帰るけど、もう終わりそう?」 「はい。私も今帰ろうと思っていたところです。」 そう言い終わった時、丁度ウィーンと小さな音をたててパソコンがシャットダウンをした。暗くなったモニターのスイッチを切る。 「なんか今日用事ある?」 「いえ、特には・・・」 「じゃ、ご飯食べにいく?」 お約束の月初残業デー以外は、夕飯をとっくに食べ終わっている時刻。お腹は当然減っている。  「はい!」 と元気よく答え、私はコートを取りに行った。
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