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待ち合わせ場所に着くと、既に係長は居た。車から出て煙草を吸っている。
いつものスーツ姿とは違う、ジーンズにポロシャツというラフな私服。
私もジーンズにTシャツという色気のない私服。
「すみません。お待たせしました。」
駆け寄ると、助手席に乗るように促された。
「どっか行きたいところある?」
「いえ、特には。どこでもいいですよ。」
「じゃあ、俺の好きなカレー屋がある湘南に行こう」
エンジンをかけ、運転を始めた。
もういいや。言っちゃえ。
やっぱ潤平に悪いから、きちんと話そう。
「私、彼氏がいるんです。」
「俺も彼女がいるんだよね。」
言い終わるか終わらないぐらいに間髪入れず、意外な答えが返ってきた。
ええええええっ!!!
じゃ、このドライブは何??
この間は3回とも本当に偶然なの?
きゃー、ただの勘違い女!?
一瞬にしていろいろな考えが頭の中を駆け巡る。
すると係長が前を向いたまま、ゆっくりと少し言葉を選ぶように、
「でも彼女はいるんだけど、あなたの事がもっと気になるんだよね。」
と続けた。
彼女がいると言われたことで、驚きと共に、明らかに私の中で彼に対する警戒心と潤平に対する罪悪感が、まるで熱せられたフライパンに置いた氷ように、一瞬で溶解し、跡形もなく蒸発していった。
だから狼狽することなく、さらっと聞けた。
「俺、小関さんは沢口が好きなんだと思ってたんだ。この間真鍋の話したでしょ?覚えてる?」
「はい。」
「ああいう風に訊いたら、あいつの話をすると思ったんだ・・・。だって
沢口のこと好きって訊いても、正直に言うわけないだろうし。」
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