ドライブ

7/10
前へ
/124ページ
次へ
待ち合わせ場所に着くと、既に係長は居た。車から出て煙草を吸っている。 いつものスーツ姿とは違う、ジーンズにポロシャツというラフな私服。 私もジーンズにTシャツという色気のない私服。 「すみません。お待たせしました。」 駆け寄ると、助手席に乗るように促された。 「どっか行きたいところある?」 「いえ、特には。どこでもいいですよ。」 「じゃあ、俺の好きなカレー屋がある湘南に行こう」 エンジンをかけ、運転を始めた。 もういいや。言っちゃえ。 やっぱ潤平に悪いから、きちんと話そう。 「私、彼氏がいるんです。」 「俺も彼女がいるんだよね。」 言い終わるか終わらないぐらいに間髪入れず、意外な答えが返ってきた。 ええええええっ!!! じゃ、このドライブは何?? この間は3回とも本当に偶然なの? きゃー、ただの勘違い女!? 一瞬にしていろいろな考えが頭の中を駆け巡る。 すると係長が前を向いたまま、ゆっくりと少し言葉を選ぶように、 「でも彼女はいるんだけど、あなたの事がもっと気になるんだよね。」 と続けた。 彼女がいると言われたことで、驚きと共に、明らかに私の中で彼に対する警戒心と潤平に対する罪悪感が、まるで熱せられたフライパンに置いた氷ように、一瞬で溶解し、跡形もなく蒸発していった。 だから狼狽することなく、さらっと聞けた。 「俺、小関さんは沢口が好きなんだと思ってたんだ。この間真鍋の話したでしょ?覚えてる?」 「はい。」 「ああいう風に訊いたら、あいつの話をすると思ったんだ・・・。だって 沢口のこと好きって訊いても、正直に言うわけないだろうし。」
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加