潤平

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「おはよう。」 「おはようございます。」 そんないつもの何気ない挨拶にも、週末の出来事が二人にいつもとは違うかすかな含みを持った笑みを添えさせる。 同僚は皆仕事に夢中で気がつかない一瞬の事だ。 でも、視線が絡み合い流れたほんのり甘い淡い一瞬も、電話の音にあっけなく現実へ引き戻される。 そして山積みの仕事に没頭しているうち、飛ぶように速く時間が過ぎ去っていく。 「お先に」 係長が鞄をもって、私の席へ来てそう言った。 今日は早目の上がりらしい。いや、私がはまって遅いだけかも? 「お疲れ様でした。」 彼の顔を見てそう言うと、係長は首を傾けて頭でドアの方を指す。 帰れる?一緒に帰ろうよ! そんなところだろう。 私もそうしたいのは山々だが、そんな心づもりではなかったから、とても無理だ。 私は頭を振って、また仕事に没頭した。 会社では時々今までとは違う笑みを交わすことはあったものの、基本的には何もなかったように振舞った。 社内結婚は多い会社だったが、課も同じ二人となると、結婚が決まるまで社内恋愛は絶対大っぴらにすべきではない。やはりこっそりとするものだ。それは暗黙の了解だった。 同期のつぐみは別の事業所の同期と付き合っていたが、それは配属される前からのかなり早い段階からで、同期内では誰もが知っていた。これは稀なケースだった。 数回短い社内メールを交わしたり、クリアーファイルに入れた書類の中にメモをこそっと忍ばせて会える日を調整し、結局、サークルメンバーとの飲み会をキャンセルしてまでその金曜日の夜に会う約束をした。 女友達3人は、のろけメールを見て、「いいよ、行っておいで」とおそらくややあきれながらも一回集まりに参加できないことを快諾した。 特に仲の良い真由美以外は潤平との関係を全く話してなかったから、そのことには触れなかった。
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