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「あの、差し支えなければ呼び出した理由聞いても良いですか?」
昨日俺に休日を与えてくれたのに呼び出すってことは、相当な理由がある筈と考え華子さんに問う。
「…いきなりでほんとに申し訳ないんだけどね、ある雑誌の表紙にうちの若手を使いたいってお願いされちゃって。」
そう言って缶コーヒーを俺に渡してくれた華子さんは、本当に困ったような顔をした。
「…雑誌の表紙!?」
「私の友人が出版社の社長やっててね、最近創刊した雑誌が夜のお店中心の内容らしくて。まだ無名同然の雑誌だから表紙モデルがなかなか見つからないらしいのよ。それで、私の店から誰か出してほしいって懇願されちゃって…。」
「そ、そうなんすか…。」
生まれてこの方モデルとかそういう次元に接したことがない俺にとっては、創刊したばかりの雑誌とは言え表紙に自分が載るなんてことは想像できない。
理解が追いつかずポカンとしていると真菜さんも店に来て、三人で撮影スタジオへと向かった。
衣装やメイクはスタジオにスタイリストがいるから問題ないそうで、男の格好している俺は何も用意してなかったがこの話を聞いてホッとした。
しっかし…
「真菜さんも今日は休みでしたよね?なのに女物の服着てるんですか?」
「あぁ、これ?彼に男物の服ほとんどクリーニングに出されちゃってさぁ、まともな服これしか無かったんだよねー。」
と、苦笑しながら薄いピンク色のコットン生地で出来たワンピースを翻した。
へー。
って、彼に!?彼って何だ!?彼氏のことなのか!?
「唯ちゃん、顔に心の声だだ漏れてるよ。笑」
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