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「こ、こんばんわー。ゆ、唯でーす…」
とある街の二丁目で夜のバイトを始めた俺は、慣れない女言葉で精一杯の笑顔を作る。
そもそも本当であればこの店の近所にあるコンビニでバイトするはずだったのに、どーしてこんな店で働くハメになったのか…。
遡ること一週間前。
ー・・・。
確かこの辺だったよな…。
バイトの面接を受けるために二丁目をウロウロしていると、道の脇でうずくまっている女性を見つけた。
昔から世話焼きな性格で、母親にさえ『お母さんみたい笑』って言われるほど面倒見の良い俺は、無条件で女性の背中をさすりながら声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「…へ、平気です。」
冷や汗をかきながら苦しいそうな表情で笑顔を作った彼女を見て、絶対平気では無いと確信した。
「俺に何か手伝えることありませんか?病院とか行った方が良いと思いますし…。」
彼女は本当に大丈夫です。と何度も答えたが、俺があまりにもしつこく聞いてくるものだから、観念したように呟く。
「…じゃあ、私の代わりに働いてくれませんか?」
働く?どこで?どんな仕事?
と、普通は聞き返すものだが、アホな俺は彼女が答えてくれたことが嬉しくて、二つ返事で『俺でよければ!』と答えてしまった。
この選択が間違いだと言うことに、この時俺は気づいていなかったのだった。
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