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はあぁぁぁぁ。
この一週間で何度ため息をついたことか…。
二丁目のオカマバー【ラビットボーイズ】で働き始めて早一週間。
慣れない女言葉と接客で俺の疲れは限界値に達していた。
「やっほー唯ちゃん!…って酷い顔。大丈夫?」
「あぁ、真菜先輩。お疲れ様です…。」
いつも明るくて元気系のおネェ、真菜さんは歳も俺とそんなに変わらなくて、何かと話しかけてくれる。
「あんまり無理しないでさ、僕みたいに素でやればイイじゃん!」
「先輩は素で女の子っぽいからいいですけど、俺が素でフロア出たらただの女装野郎ですよ?」
身長160センチ程で声も高く二重まぶたで長い睫毛。天然でこれじゃあほんとに女の子なんじゃないかって思うほど、真菜先輩は完璧だった。
ワンピース着たらメイクなんて必要ない位、可愛い女の子ができあがる真菜先輩と並んでいると、いかに俺が創りモノの女かがわかる。
「こら、真菜!さっきから友晴さんが呼んでるわよ!?」
「あ、はーい!じゃ、唯ちゃんまたね!」
ニッコリ笑ってひらひらと手を振る真菜先輩。
本当に女の子だったら惚れてしまいそうやー。
「唯ちゃんも!お呼びかかってるわよ!?」
「え!?あ、はい!」
ー・・・・
時刻は深夜2時。
上がりの時間だ。
くあぁぁ…やっと帰れる…。
そういえば俺っていつ休みなんだ?
成り行きで毎日出勤しているが、普通シフトとかあって週に最低でも1日くらいは休めはず。華子さんに聞いてみようかな…。
そんなことを考えながら更衣室に戻ると書類を整理している華子さんを見つけた。
「あ、華子さん、ちょうど良かった。俺のシフトってどうなってるんですか?」
「…その事なんだけどね、申し訳ないけどまだ正式に決まってなくって。…ちょっと色々あってさ。」
色々ってなんだろう?と首を傾げると華子さんは深刻な表情をしながら話を続けた。
「実は、レイカがあの日から連絡取れなくて。それで友達とか色々聞いて回ったんだけど…。」
「えっ!?ゆ、行方不明ですか!?…もう一週間たってますよ?」
「…それが、彼氏と駆け落ちしたみたいなの。」
「…。」
はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?
「…すいません、呆れて何も言えません。」
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