美術室にて

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「わ、部長、清井先輩!」 「あなたたち、今日はクロッキーの練習をしていてと言ったでしょ」  美術部部長桜川茉莉(さくらがわまり)は、その大きな瞳で武春たちを睨んだ。  彼女はこの石見台(いわみだい)市市立石見台中学の二年生で、一年生の武春たちの一年先輩である。  廃部になっている美術部を去年復活させようと、去年清井奈央(きよいなお)と二人で「美術同好会」を立ち上げ、武春たちが入ってくるまで二人で活動していたそうだ。  「こ、これからやろうとしてたんだぜ」  武春が言い訳すると、茉莉は 「まあ、いいでしょう」と言った。 「それでは改めて、今日はクロッキーの練習を始めます」 「それなんですけど」元基が手を挙げる。 「部長、モデルになってください」 「またなの」茉莉の綺麗な顔が少し不機嫌そうな表情になる。 「写真はしょせん二次元です。実物を見られる機会があるならそちらを優先するべきです」  元基は真面目腐った顔をして言う。
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