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「あれは若者の自動車離れを食い止める為に、我々自動車会社の若手有志が協力して作った車です」
「こないだお話したとおり御社のマスコットキャラクター「ルーナ」を使用させて頂いた車、通称痛車(いたしゃ)です」
「ほう、あれが」
細田はその車をしげしげと見た。
五枚ドアのセダンは暗い青色に塗装されている。
そして車の右側には月の色の髪と菫(すみれ)色の瞳の少女が、薄い桃色のワンピースを着てマイクを片手に持って歌う姿が描かれていた。
この少女は「ルーナ」と言い、長年皇都エネルギーの広報で活躍しているキャラクターである。
「まあ、確かに人目を引くが、本当にあれが若者の車離れを食い止める役に立つのか」
細田が疑問を口にした。
「あれは『取っ掛かり』です。あれを起点にして車に興味を持ってもらいます」
「それから150万円台のセダンや新型車などで若者の目を向けさせる予定です」
「なるほ……うっ」
細田は突然胸を押さえて苦しみだした。
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