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「持ってきたぜ」
佐東武春(さとうたけはる)は美術室に入ると、家から持ってきた本を山崎元基(やまざきもとき)に渡した。
「お、サンキュー」
元基が本を受けとると元基の隣に座っていた川上刀万(かわかみとうま)が「なに、その本」と聞いてきた。
「こないだ話していた『精霊の羽根』だよ」
「ああ、あれか。あれは本筋も面白いけど、下巻のピラミッドに登る辺りも楽しいよな」
刀万が言うと武春は「むしろあれに釣られてこの本を買った奴も多いと思うぜ」と応じた。
「何、そんなシーンあるの」元基が身を乗り出して聞く。
「ああ、あるぜ。真夜中に案内人を雇ってピラミッドを登るんだ」
「へえ」
「ピラミッドを登ることは禁止されている。もしも誰かに見つかれば逮捕されることは確実。そんな恐怖の中」
「そんな恐怖の中」
武春と元基が話していると、背後から声がした。
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