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その時、 土御門の全身に震えが走った。 つないだ手からそれが伝わる。 弾かれたように目をあげた瞬間、 ぱっと土御門が手を離す。 オレはそのまま、 椅子に座り込んだ。 土御門は横を向いて、 髪をくしゃくしゃにしながら、 何か言葉にならない悪態をつくと、 ちらりとオレを見て言った。 「ケータイ。 教えて? メルアド。」 「あ、ごめ。 オレ、ケータイ持ってない。」 未成年が親なしで、 携帯を持つのは難しい。 オレの後見人には、 父方のばあちゃんがなってくれてるけど、 離れて暮らしてるし。 万が一の時に 迷惑がかかるのは嫌だから、 携帯は持たないことにしていた。 「PCのアドなら・・・」 「マジかよ。」 呆れたように、 土御門がため息をつく。 「ご、ごめ。」 「いいよ。 でも、約束したからな。」 「え?」 「カテキョ。」 「ああ、うん。 でも、あんま役に立たないと思うんだけどなあ。」 土御門は軽く手を降ると、 それ以上は何も言わずに、 図書室から出て行った。 オレはバラバラになったプリントを集めて、 一体何を約束しちゃったんだろうと 頭を抱えた。
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