4724人が本棚に入れています
本棚に追加
「ポップコーンと飲み物買おう。」
土御門が売店の列に並ぶ。
オレは土御門の後ろに並びながら、急いで言った。
「ここ、オレが払うよ。」
「ん?俺が払うよ。」
「チケットくれたんだし、オレにも払わせて欲しい。」
土御門は少し難しい顔をしたけど、思いついたみたいに微笑んだ。
「じゃ、ゴチになろかなあ」
オレは財布を取り出すと、
「ここは、オレに任せろ!」
と言いながら、マジックテープの財布をバリバリと開け始めた。
土御門が表情を引きつらせながら、オレを見た。
あれ?
尊敬されるはずでは?
ステキーって言われるんだっけ?
「た、高橋が、マジックテープの財布を持ってる男子は、マジックテープ開けながら、『ここはオレに任せろ』って言うと、尊敬されるって・・・違うの?」
オレはおどおどと説明した。
土御門はめちゃくちゃ笑いを堪えている。
「だ、だまされた?」
土御門は口を抑えて、笑いを堪えながらうなずいた。
なんだか、
周りの人の視線が痛い。
ひとしきり、笑いの発作を堪えた土御門は、言いにくそうに、マジックテープの財布の話をし始めた。
「どんなにイケメン金持ちでも、マジックテープの財布を持ってる男はあり得ないって話で。
正しくは、
支払いは俺に任せろ!
バリバリバリ
やめてー
みたいな。」
た、か、は、し。
「俺は別にマジックテープの財布でも、やめてっては言わないけどな。」
オレは黙って札を抜くと、ジーンズのポケットに札をしまい、マジックテープの財布をバックの奥底に押し込んだ。
高橋、ブッ殺す。
そして早めに財布を買おう。
我に帰ると、順番が回って来ていた。ポップコーンは塩、飲み物はアイスティーのミルクとさっくり決める。
早くこの場を脱出したいです。
最初のコメントを投稿しよう!