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ポップコーンの箱に入っていた。 で、ですよね~!! 映画館でそんなこと、 いや、ないです。ないです。 オレは反射的にポップコーンをつかんだ。 土御門がポップコーンから、オレの手を持ち上げる。 ああ、この責め苦はもうおしまいなんだ。 ほっとしたような、残念なような気持ちがこみ上げる。 ポップコーンをつかんだ手が ひっくりかえる。 そして、土御門はオレの手のひらのポップコーンを食べ始めた。 え? 犬が主人から餌を貰うように、 土御門はオレの手からポップコーンを食べている。 唇が手のひらに触れて、 舌がポップコーンを絡めとる。 そして、ポップコーンがなくなると、残った塩をなめとった。 オレが呆然と土御門を見ていると、土御門はゆっくりとポップコーンをつかんで、 オレの前に差し出した。 心臓がめちゃくちゃ大きな音をたてる。 頭がおかしくなりそうだ。 「なな?」 なめらかな声がオレを誘惑する。 オレはぎこちなく頭を下げると、 土御門がしたみたいに 手のひらのポップコーンを食べた。 ちろりと目線をあげると、 土御門がものすごく満足そうに微笑んでいる。 暗くてよくわからないけど、 多分、今の土御門の瞳には、金色の斑点が浮かんでいるんだろう。 オレは土御門に弱いみたいだ。 ポップコーンを食べ終わったオレは、震える手でポップコーンをつかむと、ゆっくりと土御門に差し出した。 土御門がかすれた声で笑う。 多分めちゃくちゃ弱いんだろう。
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