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「昼メシいく?」
映画館を出ると土御門が聞いた。
「オレはあんまり腹へってないかもだけど。ハルは減ってる?」
「まあ、高校男子だからな。」
オレがハルって呼んだから、少し土御門の表情が緩む。
「メニューに値段書いてないような店行ってみたくね?」
オレはぞっとして答えた。
「どんだけ金かかんのそれ。
オレ、貧乏学生だって。」
「いや、俺が払うし。」
さらりと土御門がとんでもない事を言う。
いやいやいや。
「えー。ワリカンにしよ。」
にっこりと笑って土御門は頭を振った。
「ポップコーン、ななが払ったじゃん?次は俺でよくね?なんなら、マジックテープの財布から・・・」
オレはかーっとして叫ぶ。
「その話、蒸し返すとか、鬼か!
とりあえず、高橋は月曜日、死亡確定だけどな。」
土御門はクスクス笑うと言った。
「それ、俺にやらせろ。
ななが可愛くおねだりしたら、メニューに値段ない店、連れてくけどなあ。おねだりしない?」
「しない~。
絶対緊張して味わかんないし。」
絶対、値段なりの価値はないと思うんだよ。
「ななのおねだり、見たかったのにな。」
残念、というように土御門はため息をついた。
「キモい。想像しただけでキモい。」
オレは自分を抱いて、ブルブル震えた。
「じゃあ、食い放題行く?知り合いの店、ランチで。」
「セレブの知り合いの店の食い放題って高くね?」
「そこはそうでもない。まあ、どっちにしても俺が払うから、ななには関係ない。」
「うーん。」
オレは腕を組んで考え込んだ。
「さっき、ワリカンにしなかったの、ななだろ?チケット、貰いもんだったのに。」
はあ。ポップコーン代、割と簡単に出させてくれたの、こういうつもりだったんだ。
土御門は笑っている。
さっき、オレ、酷い事言ったのに。
胸がきゅんとした。
「じゃあゴチになります!」
オレは土御門を拝んだ。
「任せろ!」
バリバリバリ・・・
と、土御門が続けたので、
オレは脇腹にパンチを入れた。
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