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「春樹くん、どーも。」 白いシェフの服の人がオーダー表を持って立っていた。 土御門と同じくらい背が高い。 真っ黒なくせのある髪を後ろで束ねていて、無精髭が生えている。 通った鼻筋に堀の深い顔立ち、ワイルドなナイスガイという容貌だ。 「要さん?」 土御門が顔をしかめる。 「今日、ここなの?なんで注文取りにくんの?」 「春樹くんがかわいい女の子と2ショットだって、スタッフが言うから出て来ちゃった。」 「はあ?」 土御門が不機嫌そうに言う。 「紹介してくんないの?」 ナイスガイがにこやかにオレを見る。 「やだ。」 だだっ子みたいな口調に、オレは思わず吹き出した。土御門はますます機嫌が悪くなる。 「俺は斉藤要(かなめ)です。春樹くんのお父さんの会社のマネージャーのシェフで、あちこちのお店ぐるぐる回ってます。」 「土御門くんの同級生で、神無月七重です。女の子じゃないです。」 オレははにかみながら、言った。 斉藤さんは女の子じゃないと聞いて、一瞬おやという顔になった。 「よろしくね。」 斉藤さんが手を差し出したので、何気なく握ろうとすると、 土御門が横から 斉藤さんの手を握った。 「よろしく。」 土御門が不機嫌そうに言う。 「なんで、春樹が握手してんの?」 斉藤さんが笑いを堪えながら言う。 「なんとなく。」 土御門は斉藤さんの手をギリギリと締め上げて言った。 「早く注文取って。」 「はいはい。最近の高校生はおっかないね。」 結局、オーダーは斉藤さんのお任せになったらしい。 「七重ちゃんの為に、オレが特別に作ってあげる。」 そう言って斉藤さんが厨房に引っ込む。
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