4724人が本棚に入れています
本棚に追加
「春樹くん、どーも。」
白いシェフの服の人がオーダー表を持って立っていた。
土御門と同じくらい背が高い。
真っ黒なくせのある髪を後ろで束ねていて、無精髭が生えている。
通った鼻筋に堀の深い顔立ち、ワイルドなナイスガイという容貌だ。
「要さん?」
土御門が顔をしかめる。
「今日、ここなの?なんで注文取りにくんの?」
「春樹くんがかわいい女の子と2ショットだって、スタッフが言うから出て来ちゃった。」
「はあ?」
土御門が不機嫌そうに言う。
「紹介してくんないの?」
ナイスガイがにこやかにオレを見る。
「やだ。」
だだっ子みたいな口調に、オレは思わず吹き出した。土御門はますます機嫌が悪くなる。
「俺は斉藤要(かなめ)です。春樹くんのお父さんの会社のマネージャーのシェフで、あちこちのお店ぐるぐる回ってます。」
「土御門くんの同級生で、神無月七重です。女の子じゃないです。」
オレははにかみながら、言った。
斉藤さんは女の子じゃないと聞いて、一瞬おやという顔になった。
「よろしくね。」
斉藤さんが手を差し出したので、何気なく握ろうとすると、
土御門が横から
斉藤さんの手を握った。
「よろしく。」
土御門が不機嫌そうに言う。
「なんで、春樹が握手してんの?」
斉藤さんが笑いを堪えながら言う。
「なんとなく。」
土御門は斉藤さんの手をギリギリと締め上げて言った。
「早く注文取って。」
「はいはい。最近の高校生はおっかないね。」
結局、オーダーは斉藤さんのお任せになったらしい。
「七重ちゃんの為に、オレが特別に作ってあげる。」
そう言って斉藤さんが厨房に引っ込む。
最初のコメントを投稿しよう!