ドッペル人形【4話】

12/40
前へ
/40ページ
次へ
そこに拓真君はいた。 陸地に上半身を乗り出した形であたしを見ている。 無事だったんだ。 良かったぁ……。 「ほらよ、霧島」 拓真君は水晶玉を転がしてくる。 それは柵の隙間をすり抜けて無事、あたしの元に届いた。 血のように赤い水晶玉。 とても綺麗だなんて思えない。 こんな場所なら尚更、ね……。 「あ、ありがとう。拓真君が無事で良かった」 「霧島もな」 拓真君は目を細めて笑った。 「とりあえず水晶玉持っておけよな。俺らが協力して手に入れたんだからな」 「うん、そうだね」 あたしは水晶玉を拾い上げ、ふと魚が泳いでいる先を確認。 その先にあったのは明かりがついた場所。 そうか。 魚が拓真君を狙わなかった理由が今分かった。 あの魚はあたしがつけた光に向かっているんだ。 後ろを振り返ると、カラクリ人形が何事もなかったかの様に来た道を引き返している。 あの機械の配線が切られた証拠だ。 だからターン数も関係なく魚が動き出したのだろう。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加