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そこに拓真君はいた。
陸地に上半身を乗り出した形であたしを見ている。
無事だったんだ。
良かったぁ……。
「ほらよ、霧島」
拓真君は水晶玉を転がしてくる。
それは柵の隙間をすり抜けて無事、あたしの元に届いた。
血のように赤い水晶玉。
とても綺麗だなんて思えない。
こんな場所なら尚更、ね……。
「あ、ありがとう。拓真君が無事で良かった」
「霧島もな」
拓真君は目を細めて笑った。
「とりあえず水晶玉持っておけよな。俺らが協力して手に入れたんだからな」
「うん、そうだね」
あたしは水晶玉を拾い上げ、ふと魚が泳いでいる先を確認。
その先にあったのは明かりがついた場所。
そうか。
魚が拓真君を狙わなかった理由が今分かった。
あの魚はあたしがつけた光に向かっているんだ。
後ろを振り返ると、カラクリ人形が何事もなかったかの様に来た道を引き返している。
あの機械の配線が切られた証拠だ。
だからターン数も関係なく魚が動き出したのだろう。
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