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あたしは再び拓真君に目を向ける。
彼は水面から上半身を出したまま、それ以降は上がってこようとしない。
何故?
「ねえ、拓真君。……こっちに来てよ?」
「……ごめん。それは出来ない」
拓真君は顔を俯ける。
彼の髪の毛から滴り落ちる雫が静かに床に落ちた。
それはまるで拓真君の涙の様だった。
「ま、待ってよ!」
あたしは声を張り上げる。
「どうしてこっちに来れないの!? 拓真君が死んでるから? そんなの……関係ないし、あたし拓真君と離れるの嫌だよ! 幽霊でも良いからずっとあたしの側にいてよ? ねえ……!」
三田村君の次は拓真君もいなくなる?
そんなのやだ。
どうして大切だと思った人はあたしの前からいなくなっちゃうの?
嫌だよ、もう……。
涙が出てくる。
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