ドッペル人形【4話】

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あたしは全力で走り、拓真君のいる場所を隔てていた憎らしい柵にしがみついた。 「拓真君っ!!」 ガシガシと乱暴に揺らす。 「……霧島、俺は実はもう死んでるんだ。……だからこの世界にこれたのかもしれない」 「……拓真君は生きてる、死んでないもん、生きてるもんっっ!」 自分で言ってて涙が出てくる。 「はは、ありがとな……」 拓真君はニコッと笑った。 その後、彼は全ての覚悟をした……そんな感じの顔つきになった。 「霧島、俺がリタイアしても気にするんじゃないぞ。俺の願いはお前が助かることだから……」 「拓真君っ!!」 再度、柵を揺らす。 ――あたしもそっちに行きたいよ。 一体、あと何秒残ってるの? あたしの不安をよそに、拓真君の乗っている船が沈み始めた。 どうやらタイムが0になってしまったらしい。 「やだ、拓真君っ……!」 「くそっ! 最後まで諦めるもんかっ……! 俺だってまだ霧島を助けてやりたいんだ」 拓真君は上着を脱ぎ、勢いよく水面に投げ捨てた。 まさか泳いでこちらに来るつもり? でも拓真君の目の前にはあの巨大な魚がいる。 ――無理だ。 食べられちゃうよ。
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