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「なんか……いきなりこんなことになるなんてな……」
ジョシュは困惑を露わにしながら、濃紺色の空を仰ぎ見た。無数の星のきらめきが二人を照らす。空気はだいぶ冷え込んでおり、緩やかに頬を掠めるたび、火照ったそこから熱を奪っていった。
「きっと、アンソニーとおじさまの策略だったのね」
「ったく、勝手なことを……」
今にして思えば、サイファの厳しい言葉もこの結果を誘導していたとしか考えられない。けれど、それは自分たち二人のことを慮ってのことだろう。ユールベルはそっと隣に視線を向ける。まだ眉を寄せているジョシュの表情に、少し不安が湧き上がってきた。
「後悔しているの?」
「いや、後悔はしていない。……ユールベルは?」
「後悔していないわ」
二人は顔を見合わせて小さく笑った。
ジョシュは包み込むようにユールベルの手を握る。今朝のぎこちなさはもう消えてきた。ユールベルも、今朝は彼と離れることしか考えていなかったのに--。流されてしまった気がしないでもないが、後悔はしていないし、気持ちがすっと軽くなったように感じていた。彼の手のあたたかさに応えるように、そっと力をこめて握り返した。
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