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アイスクリームを食べ終わって外に出ると、もうだいぶ日が傾き、地平近くの空が燃えるように赤く染まっていた。そろそろ帰らねばならない時間である。ジョシュは名残惜しさを感じつつ、彼女と並んで帰路につき、やがて研究所近くの交差路で足を止めた。そして、いつものように次の約束を取り付けようとする。
「再来週にまた会えるか?」
「……来週じゃないの?」
ユールベルは不思議そうに聞き返し、少し不安そうにジョシュを見上げた。その深森の湖のような瞳にどきりとして、ジョシュは混乱した思考のままドギマギと質問を返す。
「来週は予定があるんじゃないのか?」
「別に、ないけれど」
「ないって……だってこの前おまえ……」
そこまで言いかけて、ジョシュは慌てて口をつぐんだ。しかし、少し遅かったようである。ユールベルは怪訝な面持ちでジョシュを下から覗き込んだ。
「この前って?」
「あ、いや……食堂でサイラスと話してるのが聞こえて……」
正確には「聞いていた」だが、言い訳がましく「聞こえた」と言ってしまう。もちろん、そんなことは見透かされているだろう。盗み聞きのようなまねをしたことで、非難されるかもしれないと不安になったが、彼女はただ困惑したように目を泳がせてうつむくだけだった。後頭部で結んだ白い包帯が緩やかにひらひらと揺れている。
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